新型コロナウイルスの影響により私達は人との接触に制限が必要になってきています。
そんな中で盛んに叫ばれるようになったのが「テレワークの活用」。
新型コロナの蔓延対策にテレワークが有効なのは理解できますが、すべての労働者がテレワークを実践し従来と同じ成果を得ることは困難であるのは確かでしょう。
いい大人なら、ちょっと考えれば分かる話です。
どう転がってもテレワークが不可能な仕事
以前に厚生労働省がテレワークを推奨するために作った資料を見てみると、テレワークが可能な業務というのは限られていて、事業所内でそうした業務を探り出して可能な仕事のみをテレワークに割り当てるといった内容だったと思います。
いわゆる、企画や設計、開発などの分野の業務やそれらの成果を集計する内容の仕事などのほか、IT分野に関連する事業はそもそもテレワークのみで仕事が可能になったりします。
しかし、こうしたテレワークが可能な仕事というのは日本の産業においてごく一部です。
建設業や交通関係、医療や介護などの業種に就いている人はけして少なくはないし社会の根幹を担っている方たちです。
全国の労働者をテレワーク可能な仕事に移行しようなどというのは、そもそも社会が成り立たないことになってしまうでしょう。
産業構造とテレワーク
情報通信が発達した現代においても、取得しづらい情報というのがいくつかありますが、日本の経済や社会において基礎的な大きな数字というのは、いったい何処にアクセスすれば得られるのか正直、一般人には難しいものです。
GDPや国家予算など、一見分かりやすそうな単純な数字でさえ我々一市民はどこから情報を得れば良いのか直ぐには分からないものではないでしょうか。
国内の産業構造というのも、私達が新しいデータを知りたいと思っても調べる手段に迷ってしまうでしょう。
今、話題のタレントに関することや流行のファッションについては簡単に欲しい情報が得られるのに、最も重要で一般知識として知りたい基礎的なデータは探すのに時間がかかるし、アクセスできるのは2、3年前の古い資料なのです。
NHKがニュース番組で、コロナ禍の影響によりテレワークが浸透してきていて、業種によっては成果が上がっているとの報道をしているのを最近見かけました。
世の中の多くの人が、この厄介な感染症のお陰で不安な毎日を送る中で、やや不謹慎に近い内容だったと受け取ったのは私だけではないでしょう。
現在の日本の産業構造ではテレワークが可能な業種というのは半分以下のはずです。
多くの人にとってテレワークは、この先も無縁なものであることでしょう。
世の大半の仕事はリモートでこなせない
そもそも、テレワークが本当に必要なのは育児や介護の問題を抱えながら働く人たちであったはず。
それを一部の業種がテレワークで業績が改善されただの、この先オフィスが要らないなど、限定された業種の利益だけを強調する本来のテレワークの目的を履き違えた報道がなされれることは視聴者として不愉快なことはもとより有益な情報でもないし社会的な知識にもなりえません。
テレビ局が一部の人しか該当しない出来事を、さも有用で最新のニュースかのように扱うのは社会に寄り添った立場で働く労働者を無視した差別的報道ではないでしょうか。
通信ネットワークを利用してリモートワークの実現が可能なのは、まだ一部の人達ではなく、この先近い将来もまだまだ一部の人達です。
コロナの影響で直ぐに接客商売が無になることは考えられず、医療や介護、製造や建設、農林水産業など様々な分野の業種がこの先も必要であるのは間違いありません。
テレワークが可能であるということは、いわばホワイトで恵まれた職業に就いている、またはそうした立場にある人であるといっても良いでしょう。
それを、感染防止のためにテレワークを推奨しましょうなどとメディアが一般視聴者を巻き込み無神経に取り上げるのは直接社会に係わって働く人達を無視した差別的な言動ではないでしょうか。
大半の労働者はテレワークができない立場なのです。
少なくとも、今回のコロナ騒ぎの記憶が残り続けるうちは私達が働く産業の割合に大きな変化はないことでしょう。