市販のバッテリーテスターを使ってバッテリーの寿命や劣化の診断をするとき、使用する機器によっては初期設定でCCA値を入力してやる必要があります。
ところが国産バッテリーでは、バッテリーや取り扱い説明書にCCA値が記載されていいないことが少なくなく、取り扱いに戸惑ってしまうこともあるようです。
ここでは軽自動車に使われるアイドリングストップ車用バッテリーM-42RのCCAについて独自に調べた結果をまとめてみました。
使用するバッテリーテスター

FOXSUR FBT-200
ここでバッテリーの性能診断に使うバッテリーテスター(バッテリーチェッカー)は画像のもので、リョクエンをはじめ多くのブランドから似たような仕様の商品が発売されています。
このバッテリーテスターを国産バッテリー(JIS規格に基づいて生産されたもの)で使うには、CCAを入力して初期設定をするのが一般的です。
しかし、国内メーカーのバッテリーでは肝心のCCA値が本体に記載されていない場合が少なくありません。
早めに結論を言うと、この手の海外製のバッテリーテスターを使って国産バッテリーを測定するのは簡単ではないようです。
M-42RのCCAをメーカーに問い合わせてみたら
本体や取扱説明書にCCAの記載がない場合、メーカーに問い合わせて教えてもらうことが出来れば最適です。
しかし、ここで測定対象としたER-M-42RではメーカーのGSユアサ問い合わせてみたところ、CCA値については非公表とのことでした。(同じGSユアサのバッテリーでも一部CCA値を公表しているバッテリーもあるが国内の規格に準じて製造したものは非公表らしい)
代わりに「M-42」に該当するJISの規格値として「310」という数値を教えていただくことができましたが、そもそもアイドリングストップ車用バッテリーはJISの他にも電池工業会規格(SBA)に準じて作られているのでJISの値をそのまま適用できるか疑問が残ります。
ちなみに、JIS D5301-2019を調べても、アイドリングストップ車用のバッテリーにはほとんど触れられていません。
取り扱い説明書の換算表を使う際の注意点
今回取り上げたバッテリーテスターの取扱説明書では、バッテリーサイズ(容量?)と称したAH単位で記される数値を参考にCCAを選んで入力できる表が記載されています。
この表は本体裏にも記載されていて、一見便利に使えそうですが基準値とされるバッテリーサイズの数値が何を指すのか明確になっていません。
単位がAHですので、単純に考えてバッテリーの容量を当てはめるだけで良さそうなもので、M-42R(M-42)だとカタログ値の34Ahが使えそうです。
しかし、テスター本体は海外製で測定対象も日本製に限定していないので、この表に当てはめるべきなのはカタログ値の5時間率容量ではなく欧州車や米国車の規格に用いられる20時間率だと考えるのが妥当かと思われます(断定はできない)。
このAHを単位とする数値が20時間率を表すものであるか5時間率のものであるかが確実ならありがたいのですが、それを示すための20HRや5HRなどが明示されてないので仕方がありません。
参考までにですが、メーカーへの問い合わせの際に20時間率の容量も一緒に問い合わせていたのですが、こちらは42.5Ahという回答を頂戴することができています。(担当者様ご対応ありがとうございます)
取説(及び本体裏)に記載されるAHの数値が20時間率容量だとすればM-42R(M-42)をテストする際に入力するCCA値は表中の40AH(380)と45AH(400)の中間値である390辺りが測定に使えそうです。
しかし、この390Aという値をもとに実際のバッテリーを測定してみると新たな課題が持ち上がります。測定結果のEDCが実際には450A前後の値で、どうやら設定値が390では低すぎるようなのです。
比較的劣化の少ないバッテリーの実測値を参考にしてみる
ここで推定する390というCCA値を検証するために充電を済ませた新品のバッテリーがあれば面白いのですが、あいにく新品のバッテリーは手元にないので、今回は開封後に車載して6カ月ほど経過した、まだ劣化が少ないと思われるバッテリーでチェックしてみることにします。
取扱説明書に記載の手順で診断を実行してみるとEDCの値が450A前後で表示され、規定値として入力したCCA値よりもだいぶ高い値でした。
そこで、Webで調べてみた結果、測定機器メーカーのKaiseの公式サイト内のページに参考になりそうな資料を見つけることができました。
https://www.kaise.com/j_car_ccaunknown.html
そのページにはバッテリーテスターの取説にあるのと同じく20時間率容量からCCA値が分かる表が書かれていて、バッテリーチェッカー付属の取説と違うのは日本語表記ではっきりと20時間率と書かれてたのと、「CCA標準」で入力し測定した結果が、その標準値より大きかった場合は「CCA高め」の値を参考にするようにと2本立てのCCA基準値が容量に応じて記されていました。
バッテリーメーカーから教えてもらった42.5という20時間率容量と、このKaiseのサイトにある表(CCA高め)のCCA値及び実際の測定値をもとに割り出された今のところ最も信頼できるCCA値は410Aということになります。
ただし、410AというCCA値で設定しても運用中のバッテリーで表示されるEDC値には変わることがないので、このバッテリーテスターを使う際にはもっと高い設定値を用意してもよさそうです。(テスターの性能に合わせる)
ネット上でM-42(R)バッテリー用として用いられているCCA設定値には425Aというのがありますが、どれも根拠を辿ることがでないものです。
それでも手元にある機器では実際にそれを上回る測定結果がでているので、この中国製のテスターに適用させるには425Aはある意味実用的な数値として受け取ることもできます。
また、この手のバッテリーテスターは測定誤差が1割(10%)程あるとの情報も見受けられるので、鵜呑みにせずとも完全に否定するにも至らない数値かと・・。
CCA値を425Aで測定したバッテリーの性能が100%だったとして誤差がプラス10%なら450A以上のEDC値が測定結果として表示されてもおかしくはありません。(誤差10%は測定器としてはがっかりですが)
そんな事情から、ここではM-42RのCCA値については信頼できる情報を基に割り出した410Aという数値と、実測値や限られた乏しい情報を参考にした425Aという2つの数値を基準として押さえておくことにしました。
今後、どちらが有効に使用できるCCA値か確定できる情報をあらたに入手することができたら、そのときは別にページを設けるなどで値の確定や訂正をしたいと考えています。
参考にならなかった低いCCA値
M-42RのCCAは、メーカーの回答にあった他にもネットにあるJISの換算表などというデータでも同じ310Aという数値を見受けることができますが、アイドリングストップ(ISS)車専用のバッテリーとしては低い数字かなというのが個人的な見解です。
いずれにしても、他のJIS規格に基づいたバッテリーと比べてCCA値を特定しづらいのがアイドリングストップ車専用バッテリの一つの特徴ともいえそうです。
今後、こういった難点が克服されるかは将来的にアイドリングストップ車が普及し続けていくかにもかかっていそうですが、一部の自動車メーカーでは採用車種を減らす動きがあったりと先行きが見えないのも現状のようです。
一番良いのは、CCA値を参考にすることなく国産バッテリーの性能診断が可能な高性能なバッテリーチェッカーを使うことですが、DIY用途で使うユーザーが簡単に手に入れるものなのかを考えると現実的ではなさそうです。
それでも、今回使ったようなバッテリーテスターなんかを使う人は、これら難しい課題と付き合いながら実用性との妥協点を探していくのがDIY作業の一つの醍醐味なんだと扱いにくさえ前向きに受け取れる人が多いのではと思っています。
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