エアコンの取付け作業に使うトルクレンチの購入は、機器に使用されている冷媒が現在主流であるR32なら、2分管、3分管用を選ぶことになります。
一定の用途でしか使われることのない工具ですが、販売されている製品の種類が少ないわりにメーカーや型番などどれが無難なのか迷いがちではないでしょうか。
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冷媒管用トルクレンチの無難な選び方
トルクレンチは各メーカーごとの精度差など違いが把握しにくいものです。
特に拘りがないのであれば、売れ筋の人気製品を選んでおけば無難かと思われます。
最近ではTASCOから1本で2分3分の規格に対応(両口スパナのような構成)した製品が出ているので、これを1本用意しておけば使い勝手も良さそうですが、握りやすさという点では実際に使ってみないと分からない部分がありそうです。
また、作業性の良し悪しもさることながら高価な工具を選ぶにあたって、当然と思える根拠や理由が明白でなければ選ぶ際の決め手には乏しいと考える人も少なくないでしょう。
工具選びで参考にしたいトルク値
広く選ばれている製品だからという理由だけでなく自分がこれから取り付けたいエアコンに本当に適合しているか不安だという場合には、エアコンの購入前に施工要領書などを調べてフレアナット締め付けの際の規定トルクを調べておくことができれば安心かもしれません。
しかし、これだとメーカーによってはWebで調べてもなかなか情報にたどり着けないこともあります。
そこで、補助的に使えそうな情報としてJIS(日本産業規格)によって定められたトルク値を併せて参考にしてみるのも良いでしょう。
エアコンに使われるフレアナットの規格は「JIS B 8607 2020」(冷媒用フレア及びろう付け管継手)中にある項目『6.1 フレア管継手及び銅合金ろう付けソケット管継手の基本的な形状・寸法』のi)フレアナットの締付けトルクで実際の数値を用いて規定されています。
JIS B 8607 表8の内容のうち家庭用のエアコンに該当する2分管、3分管についてわかりやすくまとめると次のようになります。
JISによるフレアナットの締付けトルク
呼び(サイズ) | トルク(N・m) |
---|---|
1/4(2分) | 16±2 |
3/8(3分) | 38±4 |
2分管は「16±2」なので14~18(N・m)、3分間は「38±4」ですので 34~42(N・m)がJIS B 8607により標準化されている締め付けトルクだと解釈できます。
この「表8」に記載されたトルク値で締め付けが可能なトルクレンチならメーカーの指定トルクも満たせていることが期待できるでしょう。
参考までに三菱電機の霧ヶ峰GEシリーズ2024年モデル(MSZ-GE4024S)の施工説明書に記載されているトルク値は次の通りです。
内外接続配管径 | 締付トルク |
---|---|
Φ6.35mm(1/4”) | 16±2 N・m |
Φ9.52mm(3/8”) | 38±4 N・m |
指定されているトルク値はJIS B 8607の表に記載されている締付トルクの値と同じであることがわかります。
なお、施工説明書のトルク値が記載されている横には「お願い」として、フレアナットは必ずトルクレンチを使用し、指定の締付トルクで締め付けてください。と書かれています。
参照したトルク値から選べる製品
現在、空調設備用のトルクレンチとして販売されている多くのものが、上に書いたJISによる締付トルクの値の範囲内であると思われます。
私が使っているトルクレンチはスーパーツール製のもので2分、3分とも同じメーカーのものを揃えています。
これらは2本とも製品仕様で明示されているトルク値がJIS B 8607に記載されているトルク値の範囲内にあって、基準としている値(中央値)と同じであるのが確認できます。
もし、売れ筋の製品のレビューや評価などから購入に不安がある場合は、実際に施工したいメーカーやモデルの施工説明書の指定トルクへの適合が確認できる製品を候補にしてみるのも良いかも知れません。
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