使い込まれたマイクロメータをオーバーホール

ミツトヨのM210-25(101-103)

職人によって長いこと使い込まれた味のあるマイクロメータを1台持っています。

手入れしたところで精度の回復が期待できないほど古いマイクロメータですが自分の手に馴染む小物としてリフレッシュさせるため簡単な分解清掃と部品交換をすることにしました。

OHのために準備した工具とパーツ

マイクロメータをオーバーホールするにあたって準備した工具とパーツは次の物です。

使用するドライバーとキースパナ

クランプのネジを回すために用意したのは先の細いプラスドライバーとミツトヨのキースパナ。下のプラスドライバーはラチェット機構を使わずにツマミを抜き取ったり取り付けたり出来るように用意しました。

交換用の新しいパーツ

交換するパーツとしては、純正品のクランプとラチェットストップです。

主要パーツを分解して注油

分解の手順は、先にラチェットストップ(低圧装置)を取り外してから、シンプル、クランプの順に分解することにしました。

ラチェットストップを緩める

最初にスピンドルとアンピルが閉じていないことを確認してからクランプを締めてラチェットストップにキースパナをセットします。

取り外した古いラチェットストップ

ラチェットストップを緩めて完全に抜き取ります。

その後、クランプを緩めて測定面を広げる方向へシンプルを回しきりシンプルを抜き取ります。

スリーブから引き抜いたスピンドル

ここではスピンドルの汚れを軽くふき取る程度にしておきます。

ネジ山部分に目立つチリや汚れがない限り手を着けない方が無難かと判断しました。

クランプの固定ネジを緩める

続いて、ドライバーを使ってクランプを固定してるネジを緩めて外します。

スピンドル固定用ボルトを回す

レバーを抜き取るとネジの下に隠れているバネ状のワッシャーが見えます。このワッシャーはボルトの頭より下にあるのでボルトの頭を指先で緩めて抜き取ります。

キツくて回しにくいと気はレバーをレンチ代わりに使って回して抜いてを繰り返せば取れるかと思います。

穴の周囲を軽く清掃

ボルトを取り除いた穴の周囲を軽くふき取って汚れを落としておきました。

ここまでで主要なパーツを分解することができました。今回のセルフオーバーホールでは手を加える部分はここまでにしておきます。

古いクランプと新しいクランプのセット

外したクランプのパーツ(上)と新しいものを並べてみたところです。

スピンドルの付け根にも給油

簡単にできるところまで分解できたこのオールドマイクロメータの注油にはミシン油を使うことにしました。

スリーブの雌ネジに給油

シンプルの外側に突き出している雄ネジ部分と、スリーブ側の雌ネジに少量注油しておきます。

本来ならマイクロメータのメンテナンスには専用の油を使う必要がありそうですが、ここでは性能の維持や回復を目的にしていないためミシン油を代用しています。

新しいパーツを使って組立て

シンプルを差し込む

清掃と注油後の組立ては、先にシンプルをフレーム側に付属しているスリーブに慎重に差し込んでスピンドルを閉じる方向へ回していきます。

取り外しのときより回転が重く感じるのは、残っている汚れか油自体が抵抗になっているからと思われます。

測定面を少し開いた状態まで差し込んだら新しいクランプを取り付に移ります。

新しいワッシャーをセット

最初に、新しいワッシャーをフレームの穴に置きます。

ボルトをセットする

次にスピンドルの固定用のボルトを指で差し込んでいきます。

戻すときも指では回しづらいのでレバーを押さえるためのネジを仮に差し込むと回しやすいですが締めすぎに気を配る必要があります。

もともと締め付けすぎに注意が必要な部分なので手加減のためには丁度良いかもしれません。

新しいレバーを組み付ける

ボルトがセットできたら新しいレバーを取り付けます。

レバー固定用ネジを取り付け

スピンドルが固定されるときのレバーの角度を調整したら、レバーを押さえながら固定用のネジを締め付けます。

新しいラチェットストップを入れる

新しいクランプが設置できたら、そのまま測定面を少し開いてクランプを締めた状態にしてシンプルの先に新しいラチェットストップを取り付けます。

古いツマミと並べてみる

取り外した古いものと並べてみたところ

こちらも丁寧にネジを締め込んでいって最後にキースパナで固定します。

リフレッシュできたM210-25マイクロメータ

これで、操作部を新しいパーツに交換し内部も少しだけリフレッシュしたオールドマイクロメータの完成です。

ゼロ位置を調整して終了

最後にゼロ位置を調整しなおして終了です。

今回対象としたマイクロメータは製造から20年以上経っているかと思われる古いもので、OHにより精度の回復や維持を目的としたメンテナンスではありません。

この世代のマイクロメータの質感と使い込まれた機器としての味わいを小物として楽しむために本体をリフレッシュさせた作業になります。