市販のデサルフェーターは評価が分かれやすく、実際の動作や内部構成が分かりにくいという印象があります。
そのため、このページではNE555をベースにした自作デサルフェーターの100μHインダクタ版として、回路図から実測波形、基板の構造までを簡潔にまとめました。
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回路図(TB-Pulse System Ver 2.01)

画像はNE555を使用した最新バージョンの自作デサルフェーター回路図です。
この回路は実装パターンではなく、スイッチング、保護、インダクタ励磁という4つの構成要素を分かりやすい形にまとめたものです。
実際に作成したプロトタイプは、可変抵抗器やトランジスタ、サーミスタなど効率化や保安のためのパーツを含んでいます。
使用した回路方式の考え方
回路方式はNE555のアスティブル動作を基礎とし、短いON時間と長いOFF時間を確保することで高電圧スパイクを生成する設計としています。
ON区間ではインダクタに電流を蓄え、OFFへの切り替わりと同時にスパイクが発生。
100μHインダクタは過度な電流上昇を抑えつつ、適度なスパイクを得られたため本構成で採用しました。
また、ゲート抵抗値やTVSダイオードなどの保護部品は、実機テストの結果に基づいて選定しています。
パーツ構成( Ver2.01)
| 部品 | 型番・仕様 | 備考 |
|---|---|---|
| IC | NE555P | DIPタイプ |
| R0 | 0Ω | ジャンパ用 |
| R1 | 1kΩ | 周波数設定用 |
| VR1 | 5.1kΩ 可変 | R1と直列:R1合計 1〜6.1kΩ (RM-065-502) |
| R2 | 10kΩ | 周波数・Duty設定 |
| VR2 | 10kΩ 可変 | R2と直列 |
| R3 | 47Ω | MOSFETゲート抵抗 |
| R4 | 6.8kΩ | Gate–GND プルダウン |
| R5 | 2kΩ | pin3チェックLED用 |
| R6 | 10kΩ | R2と直列 |
| R7 | 未定 | RCスナバ 参考値150Ω |
| R8 | 10kΩ | NPNトランジスタ用 |
| C1 | 10nF | タイミング |
| C2 | 100µF / 25V | 電源デカップリング |
| C3 | 0.1µF(100nF) | 電源安定用 |
| C4 | 0.01µF(10nF) | ノイズ低減 |
| C5 | 未定 | RCスナバ 参考値1.5nF |
| C6 | 100µF / 25V | パワー系バルク |
| C7 | 100µF / 25V | パワー系バルク |
| Q1 | IRF540N | Nch MOSFET |
| Q2 | 2SC1815 | OFFアシスト用NPN |
| L | 100µH | 逆起電力を発生 |
| D1 | SR5100 | フライホイール(ショットキー) |
| D2 | 1N4148 | Rbへ並列に設置 |
| D3 | P6KE62A | スパイク抑制TVS |
| TH | NTC5D-11 | 突入電流抑制 |
| LED | 3mm青 | pin3チェック |
| 電源 | 12Vバッテリー | サルフェーション対象兼用可 |
| テスト抵抗A | 12V23Wランプ | コイル直列抵抗 |
| テスト抵抗B | 2Ω25Wアルミ抵抗 | コイル直列抵抗 |
※TH(サーミスタ)はページ作成時点では廃止を予定しています。
※テスト抵抗はAかBどちらか一つを使ってテスト。
NE555周辺の抵抗・コンデンサはデューティー比を調整しやすい値を採用し、MOSFET「IRF540N」はスイッチング速度と耐電流性のバランスを優先しました。
高速ダイオードSR5100はスパイクの立ち上がりを阻害しないために必須であり、100μHインダクタは回路の安定性を優先して選定したものです。
MOSFETドレイン波形の実測

生成されたパルスの測定には10:1プローブ(ここでの資料作成には1:1に戻して測定)を使用し、グラウンドは基板のGNDポイントに接続しています。
今回の100μH仕様では、OFF開始直後にスパイクが立ち上がり、負荷条件(テスト抵抗の有無)によって波形のピークや形状が変化していく様子を確認できました。
実際に組み立てた側の印象としては「しょぼい波形」でがっかりな感じですが、回路としてなんとか成立していることを実証できています。
組み立て後のデサルフェーター基板

ユニバーサル基板で組み上げた実機は、部品密度が高く見える構成ですが、大電流経路とNE555の制御部分を明確に分けてレイアウトすることで、作業性と安定性の両方を確保させたつもりです。
MOSFETは放熱性を重視して外側に寄せ赤外線での温度測定を効率化できるよう黒く着色しています。インダクタ周辺の配線は最短距離となるよう調整しました。
また、TVSダイオードやパワーコンデンサ類はバッテリー側へ寄せることでサージ吸収効果を高めています。

実際の組み立てにはパーツ形状等に沿った変更が必要になります
12Vバッテリーへの接続と検証

サルフェーション除去の対象とする12Vバッテリー「M-42R」への接続には、基板からバッテリーまでは太く短いケーブルを使用し、ラインの途中に5Aの平形ヒューズを設置しています。
運転時には電圧変動やMOSFETの発熱を逐次確認し、安全性を確保しながら動作させています。
100μHインダクタを採用した本デサルフェーターは、製作段階でのテスト結果から扱いやすく安定したパルス生成が可能と判断したものですが、意に反してマイルドすぎな印象が否めません。
実際の効果については、時間をかけて繰り返し動作検証を重ね見定めることになるでしょう。
今後は次期バージョンでのインダクタの変更やデューティー比調整など、さらなる最適化の余地もあると考えています。
本ページで紹介しているデサルフェーターは、NE555をベースとした自作回路であり、特性や動作結果は使用する部品の個体差や配線環境によって変化します。
掲載している回路図および写真は実験段階のものであり、完全な動作や性能を保証するものではありません。
鉛バッテリーは大電流が流れる機器であるため、組み立てや運用の際はショート防止・極性確認・ヒューズの設置など、安全対策を十分に行った上で自己責任にてお取り扱いください。
また、高電圧パルスが発生する特性上、測定時には対応したオシロスコープやプローブを使用し、誤った取り扱いによる機器破損にも十分ご注意ください。
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